公認心理師は心理職の国家資格として、日本全国で多くの人が目指しています。しかし、資格を取得するための具体的な道筋や必要なステップを把握していない人も少なくありません。本記事では、公認心理師になるために必要な学びや実務経験、国家試験について詳しく解説します。
公認心理師資格を取得するためのルート
公認心理師資格を取得するためには、国家試験に合格・登録しなければなりません。公認心理師試験の受験資格は非常に複雑であり、理解が難しいかもしれません。以前は、大学を卒業していなくとも取得可能な受験資格もありましたが、現在では大学を卒業していることが原則です。例外もありますがハードルは高いでしょう。(詳しくは後日解説、気になる方は公認心理師法7条第3号を調べてみて下さい)
かなり複雑なのでフローチャートを作ってみました。自分の受験資格を確認してみましょう。受験資格なしだった方は、この先どうしたら受験資格が得られるのかを解説しています。

*指定施設

出展:厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26518.html)2025年1月時点
(2025年度から東京の施設も追加されるそうです。)
受験資格なし①(大学を卒業していない)だった方
大学を卒業する必要があります。公認心理師に対応したカリキュラムを持つ大学は全国にたくさんあります。コチラが非常にわかりやすくまとめられています。ただ、働きながらだとなかなか全日制の大学に通うのは難しいですよね。
公認心理師のカリキュラムを持つ学校は全日制だけではありません。通信制でも公認心理師のカリキュラムに対応しているところがあります。状況によりますが通信制であれば、全日制よりは通う日数が少ないので仕事を辞めずに大学を卒業することができます。
通信制で公認心理師のカリキュラムを修了できる大学
- 聖徳大学(千葉県)
- 京都橘大学(京都府)
- 東京福祉大学(東京都、名古屋、伊勢崎でスクーリングを開講)
- 放送大学(オンライン 実習場所は幕張)
すべての通信制大学に共通することですが、公認心理師のカリキュラムには実習(80時間)が含まれます。これは実際に病院や学校といった公認心理師が働いている施設に出向きその仕事を見学させてもらう実習になります。また事前指導や事後指導もあります。聖徳大学は実習先が自己開拓のため、自宅近くの施設で実習を行うことも可能です。放送大学は幕張で実施されます。放送大学においては実習科目を履修するために事前の試験があります。この倍率が非常に高く、放送大学に入ったけれども実習科目が取れずに卒業まで何年もかかってしまうということもあり得ます。2025年度の実習科目選考試験の倍率は18倍です。(出典:放送大学)。
実習科目以外にもスクーリング科目が設置されている学校もあり、その場合は実際にキャンパスに行ってその科目を受けなければなりません。実習以外の科目はオンラインで行うという学校もあります。放送大学では、WEBライブ授業があるため4日間幕張に行くことができれば公認心理師の学部カリキュラムを修了することができます。
受験資格なし②(大学院を卒業していない)だった方
大学院は通常2年間です。1年生のことをM1といい、2年生のことをM2と言ったりします。大学院の場合はほぼすべての大学が入学試験を課しています。学費は年間100万円くらいで設定されている学校が多いのです。もろもろの金額を含めると終了までに250万円くらいかかると考えればよいでしょう。
大学院入試は通常、外国語・専門試験(心理学)・口述試験の3本柱で構成されます。外国語と心理学についてはわかりやすいですが、口述試験には研究計画書というものを提出させるところがほとんどです。この研究計画書も採点されます。万全の対策をされることをお勧めします。
働きながらでも通えるように完全夜間で開講されている大学もあります。完全夜間開講は大学院によって多少ずれはありますが平日18時半くらいから22時くらいまで授業を行い。土曜は朝から一日使って授業を行うところが多いです。
- 聖学院大学大学院(埼玉県)
- 田園調布学園大学大学院(神奈川県)
- 東洋英和女学院大学大学院(東京都)*男女共修です。
大学院であっても通信制の課程を持っている学校があり、公認心理師のカリキュラムを備えているところがあります。実習科目やスクーリング科目については対面で行う必要がありますが、社会人にとって力強い選択肢であることは間違いないでしょう。
- 佛教大学大学院
- 東京福祉大学大学院
大学院では実習を450時間以上行うことが定められています。これは年間を52週と換算すると週に8時間は実習を行わなければならないということになります。併設の相談室におけるカウンセリングも実習時間に換算されますので、相談室が開室していれば土曜日や夜間にケースを入れるということも考えられるでしょう。詳しくは文部科学省の通知をご覧ください。
2017年以前に大学や大学院を卒業した方(科目の読み替えについて)
2017年以前に大学や大学院を卒業している方は、科目の読み替えが可能な場合があります。公認心理師法では、とらなければならない科目名が細かく決まっていますが、2017年以前に開講していた科目については科目名が違っても同じであるとみなしてくれる制度があります。
現在公認心理師の課程を持っている大学や大学院の心理系学部(研究科)を卒業している方は該当している可能性があります。心理以外の他学部(研究科)を卒業している方は概ね関係ない制度といえます。
公認心理師法第7条第2号に規定する認定施設について
公認心理師の受験資格を取得するために、大学院を出なくてもなる方法があります。それが認定施設に就職し、働きながら訓練を受けるという方法です。これであれば、学費がかからずむしろお金をもらいながら公認心理師の受験資格を得ることができます。認定施設は以下の通りです。

出典:文部科学省(2025年1月時点)
これに加えて2025年度からは東京都にも認定施設がオープンするようです。(飯田橋東口診療所。詳細はコチラ)
まとめ
公認心理師は心理職の国家資格で、多くの人が目指していますが、その資格取得の道筋は複雑です。本記事では、受験資格の確認から実習、大学・大学院の選び方までを解説しました。
まず、公認心理師試験の受験資格は基本的に大学卒業が必要で、大学院を修了するか、指定施設で実務経験を積むことが求められます。大学を卒業していない場合、全日制や通信制の大学で心理学を学び、スクーリングや実習を含む指定科目を修了する必要があります。通信制大学としては聖徳大学や放送大学などが挙げられますが、実習の事前試験やスクーリングの条件に注意が必要です。
大学院ではさらに専門性の高い知識や450時間以上の実習が必須で、夜間開講の大学院や通信制課程も存在します。例えば、佛教大学大学院や東京福祉大学大学院が選択肢として挙げられます。また、2017年以前の卒業者は、科目の読み替え制度を利用できる可能性があります。
さらに、学費負担を避けたい場合は、認定施設で働きながら訓練を受けるルートもあります。2025年度には新たに東京都の施設も追加される予定です。各自の状況に合ったルートを選び、効率的に資格取得を目指しましょう。
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