心理学を学びたいという思いがあっても、「文系だから数学が苦手」「統計なんてさっぱりわからない」と不安に感じる方は多いのではないでしょうか。実際、心理系大学院に進学したいと考えている方の中には、学部時代に統計に触れずに過ごしてきた方も少なくありません。
結論から言えば、文系出身で統計が苦手でも、心理系大学院に進学することは可能です。 ただし、まったくの無対策では厳しい場面も多いため、どの程度の理解が求められるのかを把握し、必要な範囲から少しずつ学んでいくことが大切です。
なぜ心理系大学院で統計が重要なのか?
心理学部の受験科目には数学を課していない大学がほとんどです。そのため、「数学が苦手でも心理学なら大丈夫」と思って入学する学生も多く、大学に入ってから統計に苦手意識を持つようになるのは、ある意味「心理学部あるある」とも言えるでしょう。
ところが、最近では大学院受験において心理学研究法がほぼ必須となっており、統計知識を含めた研究方法の理解は合否に直結する重要なポイントになっています。特に、入試において「心理学研究法」が出題される場合、その中には実験計画・データ分析・統計処理といった内容が含まれていることが一般的です。
どこまで理解しておくべきか?
では、「統計ができる」とはどの程度を指すのでしょうか?理数系の学問では、中心極限定理や大数の法則の証明を求められることもありますが、心理学においてはそこまでの数学的厳密さは必要ありません。心理学の統計で必要とされるのは、
- 中心極限定理がどのようなものであるか説明できること
- t検定などの基本的な統計手法を手計算で行えること
- 分析の結果を解釈し、考察できること
このような、理論よりも運用ベースの理解が中心です。
まず何から勉強すればいい?「統計がまったくわからない」という方に最初におすすめしたいのは、高校数学の復習です。特に以下の単元を重点的に学習するとよいでしょう。
- 数学I:「データの分析」
- 数学B:「確率分布と統計的な推測」
この2つは心理学統計の土台になる部分です。いきなり大学レベルの教科書(『心理学のための統計法』など)に手を出しても、基礎が抜けていると難解に感じてしまいます。まずは高校の教科書やチャート式の参考書などを活用して、平均・分散・標準偏差・正規分布といった基本概念を理解しましょう。
どこまでできれば「合格レベル」か?
心理系大学院入試で求められる水準の目安としては、
- 相関分析、t検定などの代表的手法を理解し、手計算で解ける
- ANOVA(分散分析)などの代表的な多変量解析を概要レベルで理解している
- 与えられた条件から、適切な分析デザインを構成できる
この3つをクリアしていれば、大学院入試における統計の出題には十分対応できる水準と言えるでしょう。
近年では、「この条件であればどのような実験計画を立てるか」といった分析デザイン構成型の問題が非常によく出題される傾向にあります。これは単なる計算力ではなく、心理学的な思考力と知識を統合的に問う出題であり、実際の研究計画書作成にも通じる力です。
おわりに
心理学は文系でも学べる科学とも言える学問です。数学や統計が苦手でも、基本的な部分を丁寧に押さえていけば、大学院受験で十分戦うことができます。大切なのは「数学ができないから無理」と決めつけるのではなく、「どこから手をつければ良いか」を理解して、一歩ずつ学んでいく姿勢です。
苦手意識がある方ほど、基礎から丁寧に積み上げれば大きな武器になる分野でもあります。受験のためだけでなく、研究者・実践家として心理学に関わっていくなら統計は一生の相棒。ぜひ、自分のペースで少しずつ力をつけていってくださいね。



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