【大学院入試】基礎心理学って何を勉強するの?全7単元の全体像と学習のメリハリを解説

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ナナラボ代表。公認心理師・臨床心理士。心理系大学院受験予備校として12年間、東京大学・大阪大学を含む国公立・私立大学院への合格者を指導してきました。研究計画書の添削指導歴は約10年で、受験生の経験や関心をもとに、テーマ設定から先行研究の整理、構成の組み立て、文章表現のブラッシュアップまで、一人ひとりに合わせて伴走するスタイルを大切にしています。

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公認心理師や臨床心理士を目指して勉強を始めると、必ず最初にぶつかる壁があります。それが基礎心理学です。

心理学は大きく分けて基礎心理学と応用心理学に分かれます。臨床心理学などの応用分野を学ぶ前に、大学の学部では必ず基礎心理学を履修しますよね。そのため、当然ながら大学院入試においても一定の割合で出題されます。

正直なところ、臨床系の大学院入試では、基礎心理学が論述問題のメインテーマとしてガッツリ出題されることは少ないです。どちらかというと、用語説明などの小問で問われることが多い印象です。

とはいえ、ここが落とし穴です。昨今の大学院受験は倍率も高く、用語説明のような基礎的な問題を落とすのは致命的になりかねません。合格ラインに乗るためには、基礎心理学もしっかりと学習して、取りこぼさないようにする必要があります。

でも、基礎心理学と一口に言っても範囲が広すぎて、何から手をつけていいかピンときませんよね。実は、教科書によって多少の分類の違いはあれど、学ぶべき内容はほぼ全国共通で決まっています。

今回は、標準的な教科書である東京大学出版会の『心理学』の分類を参考に、基礎心理学の全体像と、大学院入試における対策ポイントをザックリと概観していきましょう。


1. 学習 (Learning)

心理学の基礎中の基礎とも言える分野です。いわゆる条件づけや、社会的学習理論といったテーマを扱います。

内容は、パブロフの犬(古典的条件づけ)、スキナーボックス(オペラント条件づけ)、ボボ人形実験(観察学習)など、心理学を少しでもかじったことがある人なら聞いたことがある話ばかりです。

ストーリーとして理解しやすい実験が多く、基礎心理学の最初の単元として扱われることが多いですね。試験対策としては、潜在学習や強化スケジュールといった専門用語が、用語説明問題で頻出します。比較的とっつきやすい分野なので、まずはここから固めていくのがおすすめです。

2. 記憶 (Memory)

文字通り、記憶の仕組みについて学ぶ分野です。

ここは専門用語のオンパレードなので、苦手意識を持つ人も多いかもしれません。エビングハウスの忘却曲線に始まり、短期記憶、長期記憶、ワーキングメモリー、系列位置効果、プライミングなど、とにかく用語説明においては頻出の単元です。

攻略のコツは、記憶の分類(宣言的記憶や手続き的記憶など)を図にして、視覚的に整理して覚えることです。ある程度の暗記は避けられませんが、記憶障害などの知識はそのまま臨床心理学の理解にもつながります。少しハードルは高いですが、非常に重要な単元です。

記憶の分類図

3. 感覚・知覚 (Sensation & Perception)

単元名の通り五感の仕組みを扱いますが、試験対策として多くの時間を割くことになるのは、圧倒的に視知覚です。

基礎心理学において捨て科目を作るのはあまり好ましくありませんが、出題頻度と学習コストのバランスを考える必要はあります。臨床系の大学院では、この分野と密接な認知心理学自体がそこまで深掘りされない傾向があるため、優先順位は少し下げても良いかもしれません。

ウェーバーの法則やフェヒナーの法則といった感覚の重要法則と、錯視や奥行き知覚といった視知覚の重要トピックだけをしっかり押さえて、あとは余裕があれば広げるというスタンスで良いでしょう。

4. 思考・言語 (Thought & Language)

ここでは、問題解決のプロセスや、発達理論の基礎となる部分を学びます。

特に重要なのが発達心理学との関連です。臨床系の大学院では発達心理学は頻出分野ですが、その基礎となる認知発達や推論、コミュニケーションといったテーマがこの単元に含まれます。志望校の過去問を分析して、発達心理学が多く出題される学校を受ける場合は、この単元を重点的に学ぶ必要があります。

また、絶対に外せないのが失語症です。これは再頻出分野の一つです。脳のどの部位の損傷が、どのような失語症状(ブローカ失語、ウェルニッケ失語など)と関連しているのか、ここは必ず整理しておきましょう。

5. 動機付け・情動 (Motivation & Emotion)

心理学検定などでも非常によく出題される分野です。

動機づけの理論は、様々な心理療法の基礎メカニズムになっています。例えば、臨床心理学の論述問題で心理療法について問われた際に、単に技法を説明するだけでなく、この動機づけや情動の基礎的な機序から触れることができれば、他の受験生と差がつく高得点回答になります。

教科書ではページ数が少なく割かれていることもありますが、内容はとにかく濃いです。何度も読み返して、しっかりと理解を深めておきたい重要な部分です。

6. 個人差 (Individual Differences)

これは、臨床心理士や公認心理師の主要業務である心理検査(アセスメント)の礎となる単元です。

知能やパーソナリティの定義、その測定方法などを扱います。臨床心理学を学ぶ上で切っても切れない関係にあり、試験でも検査の名称や理論背景が頻繁に問われます。

もし、試験までの時間がなくて基礎心理学の全てを網羅できないとしても、この個人差の分野だけは必ず学習してください。それくらい臨床系大学院を目指す上では必須の知識です。

7. 社会行動 (Social Behavior)

社会心理学に通じる分野です。

ここでは、愛着形成や自我同一性(アイデンティティ)、印象形成、態度・説得といった、対人援助職として知っておくべき重要な概念が満載です。

これらの用語は、用語説明問題でかなり狙われやすい傾向にあります。社会心理学だからといって後回しにせず、主要な概念はしっかりと説明できるようにしておくことを強くおすすめします。ここを飛ばすのはリスクが高いです。

まとめ

基礎心理学は範囲が広くて大変ですが、こうして全体像を見てみると、臨床心理学や検査論につながる基礎体力が養われる分野だということがわかります。

まずは用語説明で確実に点数を取れるように、頻出キーワードから少しずつ攻略していきましょう。

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