心理系大学院を社会人から目指す場合、多くの方が基礎心理、英語や研究計画書に意識を向けます。
もちろん、それらは重要です。
しかし、見落とされがちで、しかも社会人受験生にとって圧倒的に不利になりやすい分野があります。
それが、臨床心理学の中でも「心理査定」です。
心理査定は、WAIS、WISC、ロールシャッハ・テスト、MMPI、SCT、バウムテスト、発達検査など、心理検査に関する知識を含む領域です。
一見すると、検査名や特徴を暗記すれば対応できそうに見えるかもしれません。
しかし、実際にはそう簡単ではありません。
心理査定は、外部の社会人受験生が独学で最も学びにくい分野の一つです。
そして、対策をしないまま受験すると、学部で心理学を学んできた受験生との差がはっきり出ます。
社会人受験生は、心理査定で最初から不利です
心理系学部の学生は、授業や演習の中で心理検査に触れる機会があります。
検査器具を見たり、模擬的に実施手順を学んだり、教員から解釈の考え方を聞いたりすることがあります。すべての学生が十分に経験しているわけではありませんが、それでも「心理検査がどのようなものか」を肌感覚として知る機会があります。
一方、社会人受験生や他学部出身者はどうでしょうか。
多くの場合、心理検査の実物を見る機会がありません。
検査器具にも触れられません。
詳細なマニュアルも手に入りません。
採点や解釈の実際も分かりません。
つまり、心理査定は重要科目であるにもかかわらず、外部受験生は核心部分にアクセスできないまま勉強しなければならないのです。
これはかなり大きなハンデです。
「検査名を覚えた」だけでは、ほとんど戦えない
心理査定の勉強で危険なのは、検査名を覚えただけで分かった気になってしまうことです。
たとえば、
WAISは知能検査。
MMPIは質問紙法。
ロールシャッハは投影法。
SCTは文章完成法。
バウムテストは描画法。
この程度の知識は、参考書を読めば覚えられます。
しかし、大学院入試で本当に差がつくのはその先です。
その検査は何を目的にしているのか。
どのような場面で使われるのか。
どこまで解釈してよいのか。
検査結果だけで判断してはいけない理由は何か。
面接や行動観察とどのように統合するのか。
ここまで理解していないと、答案でも面接でも薄く見えます。
特に社会人受験生は、実物に触れられないぶん、どうしても知識が表面的になりがちです。
「名前は知っているけれど、臨床的にどう使うのかが分からない」という状態になりやすいのです。
これは非常に危険です。
心理査定は、独学しにくい構造になっている
心理査定が難しいのは、受験生の努力不足ではありません。
そもそも独学しにくい構造になっています。
心理検査は、誰でも自由に中身を見られるものではありません。
刺激図版、検査用具、詳細な実施手順、採点基準、解釈のマニュアルなどは、検査の信頼性や倫理的配慮の観点から、簡単には公開されていません。
これは当然のことです。
検査内容が広く出回ってしまえば、検査の妥当性が損なわれる可能性があります。
しかし、受験生の立場からすると、ここに大きな問題があります。
学部生は授業の中で触れる機会がある。
しかし、社会人受験生は触れられない。
それなのに、試験では心理査定の理解が問われる。
この時点で、社会人受験生はかなり不利です。
しかも、その不利に本人が気づいていないことも少なくありません。
面接でも差が出ます
心理査定の理解不足は、筆記試験だけでなく面接でも表れます。
たとえば、志望理由書や研究計画書の中で、心理検査に触れている受験生がいます。
しかし、面接で少し突っ込まれると、検査の目的や限界を十分に説明できないことがあります。
「なぜその検査を使うのですか」
「その検査で何が分かるのですか」
「検査結果をどのように解釈しますか」
「検査だけで判断することの問題点は何ですか」
こうした質問に答えられないと、かなり厳しく見られます。
心理系大学院は、臨床家としての基礎的な姿勢も見ています。
心理検査を万能な道具のように扱ったり、検査結果だけで人を決めつけるような理解をしていたりすると、危うく見えます。
逆に、実施経験がなくても、
「現時点では実施経験に限界があるため、各検査の目的、適用範囲、限界、倫理的留意点を中心に学習しています。大学院では、実習やスーパービジョンを通して、面接・観察・検査結果を統合的に理解できるようになりたいです」
と説明できれば、かなり印象は変わります。
重要なのは、知ったふりをすることではありません。
何をどこまで理解しておくべきかを分かっていることです。
社会人受験生がやるべき心理査定対策
社会人受験生が心理査定を勉強する場合、細かい実施手順を無理に追いかけるより、まずは次の点を押さえる必要があります。
まず、主要な心理検査の分類を整理することです。
知能検査。
発達検査。
人格検査。
質問紙法。
投影法。
描画法。
神経心理学的検査。
それぞれの検査が何を目的としているのか、どのような対象に使われるのかを整理します。
次に、各検査の限界を理解することです。
心理検査は、人を一発で判断する道具ではありません。
その日の体調、緊張、動機づけ、文化的背景、検査場面、検査者との関係など、さまざまな要因の影響を受けます。
だからこそ、検査結果は面接、行動観察、生活歴、主訴などと合わせて総合的に理解する必要があります。
この「総合的に理解する」という発想がないと、心理査定の答案は一気に浅くなります。
何も対策しないと、普通に差がつく
心理査定は、社会人受験生にとって不利です。
これは精神論では埋まりません。
なぜなら、学部生は授業や演習で心理検査に触れる機会がある一方で、社会人受験生は検査器具にもマニュアルにもアクセスしにくいからです。
その状態で、ただ参考書を読んでいるだけでは、どうしても理解が表面的になりやすいです。
「検査名は覚えた」
「分類も覚えた」
「でも、臨床的にどう考えればいいのか分からない」
この状態のまま試験に行くと、筆記でも面接でも差が出ます。
心理査定は、受験生の間で対策の差がつきやすい分野です。
特に社会人受験生は、意識して補わないと、学部生との差をそのまま持ち込むことになります。
まとめ
社会人の心理系大学院受験において、臨床心理学、とくに心理査定は大きな壁になります。
心理査定は、単なる暗記科目ではありません。
検査名を覚えればよいわけでもありません。
検査の目的、適用範囲、限界、倫理的配慮、そして面接や観察との統合的理解が求められます。
しかし、社会人受験生は検査器具やマニュアルに触れにくく、独学ではどうしても限界があります。
ここを軽く見ていると、学部生との差は確実に出ます。
心理系大学院を本気で目指すなら、心理査定を後回しにしないでください。
英語や研究計画書だけでなく、臨床心理学、とくに心理査定の理解をどこまで深められるか。
そこが、社会人受験生にとって大きな分かれ目になります。
現在、社会人・外部受験生向けに、心理査定の基礎を整理する学習コンテンツを準備しています。
検査器具に触れられない受験生でも、主要な心理検査の目的・分類・限界・倫理的留意点を押さえられるように構成する予定です。
心理査定に不安がある方は、公開までお待ちください。


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